離婚と慰謝料はべつもの
離婚をしても慰謝料が発生するとは限らない
離婚というのは比較的耳にしやすい法律問題です。
テレビでは、よくどこそこの芸能人が離婚した、慰謝料はいくらだなとという報道がされます。
たとえば、大澄賢也・小柳ルミ子夫妻の離婚時には慰謝料として1億円が支払われたという報道がされました(さすがに古いですかね)。
このように、「離婚」というと「慰謝料」という言葉がついてまわるほどに、(主にテレビのせいですが)離婚と慰謝料は深く結びついているように思われています。
そのため、相談に来られる方の中には、「離婚」をしたら理由を問わず女性が高額な「慰謝料」をもらえると勘違いされている方がけっこういらっしゃいます(別に悪いことではありません、こういった法律問題に対する誤解を解くのも弁護士の役割ですから。悪いとすると、離婚や慰謝料の問題を面白がって取り上げるだけでろくにその背後にある法律関係を解説しないワイドショー、そしてそれを放送するテレビ局です)。
しかしながら、離婚をしたら必ずしも慰謝料がもらえるというものではありません。
もらえるケースでも、相場は100万円~500万円といったところです。
テレビでよくみる何億円もの慰謝料というのは、実は慰謝料ではなく財産分与であることが大半です(もしくは、話題作りのための高額慰謝料だったり、どうしても離婚したいがために相場からかけ離れた慰謝料を払っているケースもあるかもしれません)。
慰謝料がもらえるのは、どちらか一方があまりにも悪い場合
離婚慰謝料がもらえるケースというのは、簡単に言うと、夫婦のどちらか一方があまりに悪い場合です。
たとえば、不倫をした、DVをした場合などです。
夫婦のどちらにも婚姻関係の破綻に至った原因があるような場合や、どちらか一方が悪いものの、それほど悪いとは言えない場合(たとえば、何度言っても洗面台を使った後に洗面台をふかない、便座をあげたままにする、など)には、慰謝料の支払いは認められません。
このように、離婚時に慰謝料が発生するのはけっこうまれといえます。
慰謝料が請求できなくても財産分与や養育費の請求などはできる
慰謝料はめったにもらえません、とお話しすると、なにももらえないのかとガッカリされる方が多いのですが、ご心配なく。
離婚にまつわるお金の問題は慰謝料だけではありません。
財産分与といって、夫婦が築いてきた財産を平等に分配してもらう権利はあります。
また、子どもがいる場合には、子どもを引き取るほうが養育費を請求できます。
このほかに離婚時年金分割というものもあります。
慰謝料がもらえないのであれば離婚をしないという方も
中には、どうしても慰謝料が欲しい、慰謝料がもらえないのであれば離婚には応じないという方もいらっしゃいます。
これによって、本来は慰謝料が支払われないような場合にも、慰謝料が支払われるケースもあります。
ただ、この選択は相応にリスクをはらんでいるのでご注意ください。
「慰謝料を払わないのであれば離婚をしない」と突っぱねたのに対し、「慰謝料を払う気はないので、もう離婚は求めない。それであれば同居してまた夫婦としてやり直そう」と離婚の意思を撤回されることもあります。
離婚はどうしても感情がからんできますが、だからこそ、弁護士などの冷静な第三者にご相談ください。
離婚をするか否かはその後の人生に大きく影響するものです。
相手の要求をのみたくないという感情や、あるいは早く別れたいという感情ももちろん大切ですが、離婚を受け入れた、もしくは拒否したあとも人生は続きます。
だからこそ、その後のことも見据えた判断を冷静にすべきです。