養育費を不払いにする親たち
最初は支払いをしてもじょじょに養育費の支払いをしなくなる親たち
養育費は、原則として子どもが成人するまで支払う必要があります。
多くのケースでは10年以上支払いが義務付けられます。
ただ、はじめは真面目に支払いをしても、1年経つと支払いを滞るようになり、2年ほどでまったく養育費を払わなくなるケースが多いです。
不払いの原因はなに?
これはあまりにも無責任としか言えない事態です。
経済的事情の変化があったのであれば養育費の減額調停を起こしたり、事情を話して支払いの猶予を求めたりすべきです。
しかしながら、そのような変化がないにも関わらず、ただ、「払いたくない」という理由で不払いにする親が多いです。
この原因は様々なものが考えられます。
子どもに対する愛情の喪失、親同士の感情の対立、面会交流不履行に対する報復、など様々なものが考えられます。
不払いを押し通そうと思えば押し通せる現状
ただ、このような違法な不払いをする原因としては、現在の民事執行法があまりにも使えないことも大きいです。
現在の民事執行法でも、相手が不動産を所有していれば、不動産を差し押さえて競売にかけたりすることはできます。
しかしながら、不動産を所有しており、差し押さえられる危険があるにもかかわらず養育費を不払いにする人は少ないです。
不動産を持っていない人に対しては、預貯金の差押えや給与の差押えといった方法もありますがこれらの方法はかなり問題点をはらんでいるのです。
預金の差押えをするためには金融機関と支店を特定する必要がある
裁判所は、預金を差し押さえるためには金融機関と支店を特定しなければならないとしています。
どこの金融機関のどの支店に口座を保有しているのか、結婚している間ならわかったでしょうが、離婚後に新しい口座を作られでもしたらわからなくなります。
裁判所は、銀行等の金融機関が、差し押さえられた債権がどの債権か、速やかに、かつ、確実に、識別できるものでなければならないから、預金を差し押さえるためには、支店まで特定する必要があるとしているのです(全ての支店をあげるのもダメ)。
それでは、支店を特定する方法があるかと言うと、とくにありませんでした(財産開示手続というものもありますが、あまりに実効性に欠けるために無視されます)。
現在では弁護士会照会によって、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行であれば、どの支店に口座があるのか特定することができるようになりましたがその程度です。
このように、預金差押えというのは、強力ではあるものの足かせが多いのです。
給与を差し押さえるためには勤務先を特定する
次に、給与差し押さえという強力な方法もあります。
給与から養育費を天引きするのです。
ただ、この方法も、勤務先を特定する必要があります。
離婚をした後に転職をしたり、給与差押え後に転職をしたら機能しなくなってしまいます。
相手が素直に勤務先を教えればよいのですが、養育費を不払いにするような相手は、そのようなことを答えません。
そのため、探偵に依頼して勤務先を特定するなどしなければなりませんでした。
民事執行法の改正によって現状大きく変わる可能性
このように、日本の強制執行制度は非常に使いづらく、養育費を不払いにした人間がいわばゴネ得するような状態にありました。
だからこそ、養育費も支払わないのです。
しかしながら、今年の5月10日に民事執行法が改正され、預金差押えや給与差押えが大きく機能する可能性が出てきました。
この点は次回解説します。