養育費をきちんと支払ってもらう方法
養育費は請求時から発生するのが原則
離婚をする夫婦に子どもがいる場合、子どもを養育していく側が、他方に対して養育費の請求ができます。
(離婚をしたとはいえ二人の子どもである以上、どちらが養育していくことになったとしても、その費用(養育費)を負担しなければなりません)
ただ、離婚をするときにどちらが親権者になるかは決める必要がありますが、養育費の取り決めをしなくても離婚はできます。
そうすると、離婚をし、親権者をきめたものの、養育費が決まっていないというケースが少なからず発生します。
養育費を定めていなかった場合、当然のように養育費の分担義務が発生するというものではありません。
現在の裁判実務では、養育費は請求時から発生するという考え方がとられています。
もしも養育費の取り決めをしていなかった場合には、
・すぐに相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定めた家庭裁判所に対し、養育費分担調停(もしくは審判)の申立てをする
・すぐに申立てができないなら、配達証明つきの内容証明郵便を相手方に送付し、養育費の支払請求をする
ことが重要です。
なお、養育費分担調停の方法については、裁判所のウェブサイトに書式もありますので、御覧ください。
必要なのは、
・申立書と申立書の写し
・子どもの戸籍謄本
・(あれば)双方の収入が証明できる資料(たとえば、給与明細、源泉徴収票、所得税の非課税証明書など)
・子ども一人につき1200円分の収入印紙(二人分の養育費を求めるなら2400円、三人分なら3600円です)
・郵便切手(家庭裁判所ごとに異なりますので、申立をする家庭裁判所に郵便切手の組み合わせを確認してください)
調停や審判など、裁判所を利用せずに養育費を決める場合
離婚は、裁判所を利用せずに、夫婦双方が合意で決めることができます。
ただ、裁判所を利用しないで婚姻費用の取り決めをする場合には2点注意が必要です。
・養育費は書面で定める
・可能であれば、強制執行認諾文言付きの公正証書で定める
まず、書面で決めなければ、言った言わないの話になってしまいます。
「養育費を月8万円ときめた」と主張しても相手が嘘を言って来た場合には、証拠がなくて負けてしまうおそれがあります。
次に、強制執行認諾文言付きの公正証書で養育費を決めた場合には、相手方が養育費の支払いをしなくなったら、すぐに強制執行にうつれます。
ただ、公正証書で定めたものの、強制執行認諾文言がない場合、もしくは、公正証書で養育費を定めなかった場合には、相手方が養育費の支払いをしなくなったら、家庭裁判所に対して養育費の分担調停もしくは審判の申立をする必要がでてきます。
弁護士の経験上、強制執行認諾文言付きの公正証書を拒む相手には注意をする必要があります。
なにか文句をつけられそうならすぐに不払いをしてやろう、などと、とんでもないことを考えているケースがうかがわれます。
養育費を家庭裁判所の調停もしくは審判で定めた場合
養育費について、家庭裁判所の調停もしくは審判で定めた場合には、3つの方法が使えます。
・履行勧告
・履行命令
・強制執行
の3つです。
養育費の履行勧告
相手方が養育費の不払いをしたら、裁判所に申し出ることによって、履行勧告をしてもらえます。
家庭裁判所は、養育費の履行状況を調査し、養育費を支払うように勧告してくれます。
履行『勧告』とあるように、強制力はありません。
しかしながら、裁判所から履行勧告があるだけで驚いて養育費を再び支払うというケースもありますのでかなり有用な手続きです。
この履行勧告の申立てには費用もかかりませんので、調停もしくは審判で養育費を定めたものの不払いにされているケースでは積極的に利用を考えて良いでしょう。
養育費の履行命令
これは裁判所の出す命令となります。
養育費を支払えと命令を出してもらうのですが、正当な理由がなく、この履行命令にも従わない場合には、相手は、10万円以下の過料に処せられることになります。
もっとも、過料なんて知ったことか、というとんでもない相手にはあまり意味がありません。
強制執行
強制的に養育費を支払わせる方法です。
主に、相手の保有する預貯金の差押え、給与の差押え、といった方法を用いて、相手方の財産を差し押さえて強制的に回収します。
このように、裁判所を使った手続きには利点も多いので、離婚時にはまず弁護士への相談をおすすめします。