別居をしない場合の財産分与の基準時(家庭内別居の場合は?)
財産分与の基準時は別居時が原則
財産分与はいつの時点の財産を対象に分与されるかの記事でも解説しましたが、財産分与の対象となる財産は、原則として別居時を基準として考えることになります。
つまりは、別居をした時点では夫婦双方の財産の合計が200万円だったけど、離婚が成立する段階では100万円に減っていた、という場合には、離婚が成立する段階の100万円を対象に財産分与をするのではなく、別居時の200万円を対象に財産分与をすることになります。
それでは、別居をしていなかった場合にはどうなるでしょうかというのが今回のテーマです。
同居したまま離婚した場合には、口頭弁論終結時の財産が基準となる
同居をしたままの場合には、口頭弁論終結時が基準時となります。
口頭弁論終結時とはなんぞやと思われるでしょうが、要は離婚の裁判が終了した時点です。
裁判をしないで離婚をする場合には、離婚時の財産が対象になるでしょう。
家庭内別居をしていた場合はどうか
ここでよくある質問として、家庭内別居をしていた場合はどうかという質問をうけることがあります。
これには実は審判例があります。
東京家審平成22年6月23日・家裁月報63巻2号159頁がそれです。
これは、夫の退職金の評価を巡って争いになった事例ですが、以下のような経緯をたどっています。
夫婦は昭和58年に結婚
平成18年に同居のまま離婚調停の申立て
離婚調停が成立しなかったので、平成19年に離婚訴訟を提起
平成20年に別居
という事例です。
退職金というのは在籍年数が長いほうが金額が高くなります。
夫は、遅くとも平成19年ころには婚姻関係が破綻していたのだから、平成19年時の退職金の額を対象にして、財産分与を決めるべきだと主張しました。
しかしながら裁判所は、確かに、婚姻関係は平成19年ころには破綻していたことが認められるが、それ以後も双方は従前どおり同居生活を送っていたのであるから、退職金の分与の算定の基準となる期間は、その同居期間を基準とするのが相当である、としました。
つまりは、婚姻関係の破綻時ではなく、あくまでも別居時を基準時とすべきと明示したのです。
このように、よほど特別の事情がある場合は別ですが、家庭内別居をし、婚姻関係が破綻していたような場合も、原則通り別居時が基準時となるでしょう。