夫による心理的虐待によって婚姻関係を継続し難い重大な事由があると認められた事例
裁判例の紹介
今回紹介する裁判例は、東京地判平成16年9月29日の裁判例です。
事案の概要は以下のとおりです。
・夫婦は平成4年に結婚、平成12年に別居をし、別居後4年が経過している
・1回程度妻は夫から暴力を受けたことがある
・夫婦喧嘩に際して、夫の言動が粗暴で、妻に対するいたわりも感じられず、夫による暴行・虐待といったダメージを受けていたことが認められ、その態様・程度は決して軽視しえない
・夫は、このような粗暴な言動は夫婦喧嘩によくみられる程度のものであったと供述しているが、自らの言動が妻に与える影響を考えない、身勝手な言い分とされた
・夫は前立腺炎を抱えており、夫婦間の性交渉がほとんどもたれなかった
このような事案で裁判所は、離婚を認めるに至りました。
DVに匹敵する場合でなくとも、婚姻関係を継続し難い重大な事由がある
この裁判例で注目に値する点として、夫が、DV(ドメスティックバイオレンス)に匹敵する場合でなければ離婚はできないと主張したのに対して、
裁判所は、DVに匹敵するような事態に至れば、婚姻関係が解消されるべきは当然であって、そのような事態に至らない場合であっても、日常生活の言動が婚姻関係の継続に必要な夫婦の信頼を破壊して修復しえないほどに至ることはありうる、としました。
夫婦喧嘩だから何を言っても許されるということはない
裁判所は、夫婦喧嘩だからこの程度は許される、というような認定はしませんでした。
むしろ、夫婦喧嘩の際の言動であれば、なおさら、婚姻関係の修復を不可能にとする程度に至る危険があることはいうまでもない、としました。
夫婦喧嘩でカッとなることはあるでしょうが、喧嘩だから何を言っても許されるということはありません。
むしろ、喧嘩をして、相手を傷つけるような粗暴な言動は、それは離婚に至る危険があるということを重々認識する必要があるでしょう。