デリヘルに何度も電話したが実際にデリヘルを利用したのは1回であるとして離婚を認めなかった事例
デリヘルに計8回連絡したものの、実際に利用したのは1回のみとされた
今回紹介するのは、横浜家判平成31年3月27日(ウエストロー)の事例です。
この裁判例では、主に(1)デリヘル利用が不貞行為である、(2)スマホゲーに約32万円も課金するなどの浪費を行った点が問題となり、妻が夫に対して離婚と慰謝料を求めて訴訟を起こしたという事例です。
スマホゲーによる浪費の点も興味深いですが、今回はデリヘル利用の点について解説していきます。
判決では、平成28年6月28日から平成28年12月17日までの間に計8回夫が異なるデリヘル業者に電話したことが認められています。
しかしながら、夫は、最後の1回だけデリヘルを利用して性的サービスを受けたという点は認めているものの、それまでの電話では実際は利用する決心がつかずに利用しなかったと否定しました。
裁判所は、夫が否認したデリヘル利用については、証拠からデリヘルを利用したと認めることはできないとして、デリヘルを利用したのは1回のみと認定しました。
これは女性側からすると、おそらく到底納得いかない認定でしょう。
弁護士の個人的見解としても、これは個別事例としてとらえるべきで一般化して考えるべきではないと考えます。
デリヘルに電話をするということはデリヘル利用が推認される
デリヘル業者に電話をしたということは、それだけで、デリヘルの性的サービスを利用したことが推認されます。
ただ、あくまでも推認であって、断定されるわけではありません。
デリヘル業者に電話をしたが、その30分後には帰宅していた、というような事情があれば実際にはデリヘルを利用していないという推認が働くでしょう。
反対に、デリヘルに電話をした日にATM等で数万円以上の現金が引き出されているというのであれば、デリヘル利用が強く推認されます。
今回の判決では、デリヘルに電話をしたという証拠を、妻側が強く見すぎてしまったのが敗因のように思われます。
反省していることや二人の子供がいること等の事情から離婚は認めなかった
1回とはいえ、デリヘル利用は不貞行為と評価されうるでしょう。
ただ、今回の夫側は、デリヘル利用が発覚した後、発覚当初から妻に謝罪し、今後は利用しないことを約束しています。
不貞行為は離婚原因としては強い事情になりますが、このように、不貞行為をしてしまった側の反省を踏まえて、離婚事由に当たるとまでは言えないとされることもあります。
また、この判決の背景には、夫が反省しており、関係修復を望んでいること、そして8歳と5歳の二人の子どもがいることも大きく影響しているように思われます。
デリヘルを利用した夫が「だからなんだ、デリヘルくらいいいだろ」という態度をとっていれば離婚は認められたでしょう。
1回くらい不貞行為をしても問題ないだろう、というふうには考えないでください。
また、小さい子どもがいる場合には、裁判所は基本的に離婚を認めることに抵抗感を示す傾向にあるように思われます(親の生活よりも、子どもたちにとってどのような家庭になるのが幸せかを見ているように思われます。父親と母親がいる家庭が望ましいという判断がまずあるのではないでしょうか)。
真摯なやり直しの意思がなければ離婚が認められていた可能性あり
今回は、デリヘル利用や浪費について、夫の真摯な反省や関係修復を望んでいることが裁判所にとっても重視されているように思われます。
形だけの、やり直したいという意思表示だけであれば離婚が認められていた可能性があります。
離婚をつきつけられた夫、もしくは妻は、感情的な対立はもちろんあるでしょうが、まずは別れたいのか別れたくないのかを真摯に考えるべきです。
その上で、相手の言い分を聞き、反省すべき点をきちんと反省し、関係修復を望むのであれば具体的にどうしていくのかを示すことにより関係が修復されることもあります。