親権を獲得したい
親権獲得の基準
子どもがいる夫婦が離婚をする場合、どちらが親権を持つのか決める必要があります。
親権は夫婦の合意によって決めることが可能です。
しかしながらどちらが親権をとるべきか、調停も含めて話し合いで決まらなければ最終的には裁判所が判断することとなります。
裁判所の親権に関する判断基準は以下のようなものなどがあります。
- (1)どちらのほうが観護能力(年齢、性格、健康状態など)があるか
- (2)どちらのほうが家庭環境(収入・資産や住居、生活環境など)が良いか
- (3)子どもの年齢、現在の環境への適応状況、環境変化に対する適応性
ただ、これらはポイント制で決められるものではありません。
夫のほうが収入があるから+1ポイント、妻のほうが年齢が若いから妻に+1ポイントなどと合計ポイントを競うようなものではなく、あくまでも上記のような事情を総合考慮することになります。
ただ、総合考慮といっても、実務的には非常に重要な基準とあまり重要ではない基準がありますので、以下、実務的な基準を解説します。
実務的な親権獲得の基準
ここからの解説は弁護士の実務感覚にもとづいた解説です。
法律で明確に決まっている基準ではないため、その点ご了承ください。
子ども年齢は何歳か
まず問題となるのは、子どもの年齢です。
子どもの年齢によっては、子どもの意思が非常に重要になります。
乳幼児や小学校に入学したて:子どもの意思はほとんど関係ない。年齢が幼ければ幼いほど母親のほうが有利になる
おおむね10歳前後以上:実務的に子どもの意思が確認されてくる年齢。年齢が高ければ高いほど子どもの意思も重視される
15歳以上:子どもの意思が非常に重要
なお、子どもの意思の確認は家庭裁判所の調査官が行います。
別居している場合は父母のどちらと生活をしているか
子どもが父親と母親のどちらと過ごしているかは非常に重要です。
裁判所は観護の継続性を重視しており、特別の事情がない限りは現状を変更しません。
子どもが父母のどちらかと同居しているか、というのは極めて大きな判断基準になります。
万一子どもを連れ去られてしまったら悠長に調停を行うのではなく、子の引き渡しの審判と審判前の保全処分を早急にするべきでしょう。
なお、親権を獲得することを目的として子どもを連れてある日突然黙って別居するというケースが見られます。
しかしながら、この方法にはかなり疑問があります。
日本ではあまりにも現状維持が重視されてきましたが、ハーグ条約の批准などでこういった子どもの連れ去りに対して疑問の目が向けられるようになってきています。
子どもを連れ去ったものの子の引渡しの審判で、子どもを引き渡さなければいけない状況になったら一転して不利になるので注意してください。
今まで主として子どもを養育していたのはどちらか
離婚をするまで子どもをきちんと養育していたほうと、それまで子どもの養育にほとんど関わっていないほう、どちらが有利かと言えば、それはもちろん子どもをきちんと養育してきた実績のあるほうです。
兄弟姉妹は原則として分離しない
子どもが二人いるからといって、それじゃあ父親に一人、母親に一人親権をあげましょう、ということはありません。
子どもは物ではありません。
子どもの生育環境を考えた場合、兄弟姉妹をそれぞれ別れさせることには悪影響があると考えられていますので、どちらかの親が二人の親権を獲得するのが一般的です。