離婚を決意した
離婚を決意したらやるべき4つのこと
離婚を決意したら即離婚というわけにはいきません。
とにかく離婚をしたい、という気持ちから誤った行動をとってしまい、取り返しのつかない事態になってしまう方も残念ながらいます。
婚姻はあくまでも法律で定められた制度です。離婚をする場合も法律にのっとって行う必要があります。
弁護士がなぜ離婚問題を扱っているかというと、このように離婚が法律問題であり、離婚をする場合もきちんと法律知識をふまえて行動をしないと損をしたり、親権をとられてしまったりと、不利になるおそれがあるかです。
ここでは、離婚を決意したらやるべきことのうち、重要な4点をあげて解説していきます。
離婚を決意したらやるべき4つのことは以下のとおりです。
- (1) 弁護士に相談する
- (2) 配偶者の収入と財産を把握する
- (3)(子どもがいる場合)子どもをどう育てていくか決める
- (4) 住居を決める配偶者の収入と財産を把握する
以下、それぞれくわしく解説します。
(1)弁護士に相談する
離婚を甘く見てはいけません。
子どもがおらず、双方財産がなく、どちらも慰謝料を求めておらず、さらには双方離婚をしたいというのであれば当事者同士の協議離婚で問題ありません。
しかしながら、
- 親権
- 養育費
- 財産分与
- 慰謝料
- 相手が離婚を拒んでいる
これらが関わってくる可能性がある場合には弁護士に相談するべきです。
どちらも親権が欲しいという場合には非常に熾烈な争いになるケースが多いです。
また、お金が関わってくる場合には、なんで別れる相手にお金をやらなきゃいけないんだ、と途端に否定的になる方が多いです。さらに、お金を要求する方としても過大な金額を請求してくることが多いです。
このほか、離婚をするかどうかについて争いになることもしばしばあります。
これらの問題は当事者同士ではなかなか解決できません。
解決できたとしてもどちらかの当事者に一方的に有利な条件になっているケースが多く見受けられます(もちろんそれで納得済みであれば問題ありません。ただ、相手に押されるがままになってしまって離婚してしまうケースが見受けられます)。
離婚調停は自分一人でもできるらしいからとりあえず自分でやってみて、自分で限界を感じたら弁護士に依頼しようと考える方もいますが、これもおすすめしません。
離婚調停になるということは、何らかの争いが生じているケースです。
離婚調停は話し合いではありますが、調停委員はできるだけ調停をまとめようとする人が多いです。
そうすると、押しの強い相手だなと思ったらそちらの説得はやめて、押しの弱そうな相手を説得しに来るケースも多々見られます。
こちらが譲れないことは譲れないと拒み、相手の理不尽な要求も拒む必要があります。
争いになっている以上、早い段階で弁護士の助力を求めるべきです。
離婚はきちんと作戦・方針をたてて進めていかないと思いもよらない不利益を被る可能性があります。
争いになる可能性がある離婚問題はできるだけ早く弁護士にご相談ください。
(2) 配偶者の収入と財産を把握する
離婚を決意したらまずは配偶者の収入と資産を把握するべきです。
離婚をする場合には財産分与や婚姻費用、養育費など財産が関わってくる問題が多くあります。
「配偶者の収入や資産がいくらあるのかわかりません。でも財産分与として2000万円、養育費として毎月20万円ください」
ただこんなことを言っても通りません。
「結婚した後、相手の名義で不動産を買いました。不動産はローンを完済しており、見積もりをとったら4000万円の価値がありました。財産分与として2000万円を請求します。相手は会社員ですが収入は年収で1100万円、私は無職ですがとくに技能等もなく年齢を考えるとこれからの収入はパートなどでまかなうのが精一杯です。養育費として20万円を請求します」
これであれば説得力が出ます。
相手の収入・資産を把握しないと相手に隠されてしまったらどうにもならなくなります。
そのため、離婚を決意したら、まずは別居ではなくて相手の収入・資産を把握する必要があるのです。
収入は
- 給与所得者であれば源泉徴収票
- 自営業者であれば確定申告書
からわかるでしょう(源泉徴収票がなければ月々の給与明細からでもある程度の計算はできますが、給与明細だけですと賞与がわかりません)。
また、市町村役場で入手できる所得証明書によって立証するケースもあります。
資産は主に
- 預貯金
- 有価証券(株式など)
- 不動産
- 自動車
- 生命保険(解約返戻金が出ることがあるためです)
- 退職金
といったものが財産分与の対象になりえます。
これらの収入・資産は同居していれば比較的調べやすいでしょうが、別居を開始すると途端に調査が難しくなることがあります。
たとえば預貯金があるはずだ、などと主張しても、「どこ銀行のどこ支店の口座に預貯金があるって言ってるんですか?」「それはわからないけど預貯金があるはずです」などといっても相手にしてもらえません。
財産分与の主張をする場合には、相手がどれだけの財産をもっているのか、その立証責任は自分にあると考えてください。
だからこそ、離婚をすると決めたら配偶者の収入と資産を把握することが重要なのです。
(3) (子どもがいる場合)子どもをどう育てていくか決める
子どもがいる場合はどちらが親権を持つか決める必要があります。
親権を決める際に考慮すべきは、子どもをどのようにして育てていくか、です。
子どもの親権が問題となった際によくある勘違いは、自分は収入があるけど相手には収入がほとんどない、収入がある自分が育てていったほうが子どもは幸せなはずだ、という勘違いです。
たしかにお金は重要です。
お金がなければ生活はできません。
しかしながら、夫婦双方が自分に親権をと主張した場合、最終的には裁判所がどちらが親権を持つべきか決めます。その際、お金の問題は大して影響しません。
収入の問題は養育費で解決できるからです。
こっちの収入は多いのにあちらの収入は少ない、だから子どもを育てていくのは自分が相応しいなどと主張しても、裁判所からは「じゃああなたがたくさん養育費を払えばいいんじゃないですか」と言われてしまうでしょう。
問題はどのようにして子どもを育てていくかです。
親権について争いになれば最終的には裁判所が決めます。
親権獲得のポイントは別で説明しますが、それより重要なのは子どもの生育環境です。
本来ならば(裁判だったら)親権を獲得するのが難しいケースでも、自分のほうが子どもを育てていくのにふさわしい、と相手に理解してもらえれば親権を獲得できるケースもあります。
子どもの年齢にもよりますが、ちゃんと子どもといてあげられるかどうか、愛情をもって育てていけるかが重要です。
たとえば、子どもは3歳なのに、自分は深夜まで仕事があって日中は誰も子どもの面倒を見られない、という状況にもかかわらず親権が欲しいと言っても話になりません。
親権が問題になる場合はもちろんですが、問題にならない場合であっても、親族の協力を得るなどしてきちんと子どもの生育環境を整備することが重要です。
子どもがいる場合は、離婚をする前に、まずはどのようにして子どもを育てていくか考えるべきです。
(4) 住居を決める
離婚後も同居をされている方もいますが、たいていの方は離婚をした後は別居します。
そのため離婚後、もしくは離婚の話を切り出す際に、どこに住むかを決める必要があります。
住居の決め方は以下の4つです。
自分が家から出ていくパターン
ご相談に来られる方は、このパターンが一番多いです。
自分が家から出ていく場合は、勤務先の問題さえなければ実家に一度戻るという選択をとられる方が多いです。
そのため、実家に戻ろうと思った場合は、まずは親御さんと相談してください。
たいていの親御さんはどれだけ辛い婚姻生活を送っていたのかを知らずに結婚生活を続けたらどうかと言うでしょうが、素直にどうしても続けられないんだ、離婚意思はもう決まっていると告げるのが良いでしょう。
DV等の緊急の事情がある場合や、突然行っても親御さんが迎えてくれそうであれば何もいわずに実家に戻るという方法もあります。
このほか、離婚をしたいが勤務先の関係や親は既に死亡している等の事情で実家に戻れないという方もいます。
この場合には賃貸を考える必要があります。
賃貸マンションないしアパートを借りる場合には、現在の自分の収入、別居後の自分の収入等を考慮してきちんと支払っていけそうなところを借りるようにされてください。
配偶者に家から出ていってもらうパターン
意外に思われるかもしれませんが、この方法をとられる方もいらっしゃいます。
配偶者に家から出ていってもらうのは、たいていが自分の持ち家で、配偶者には持ち分等がないか、自分のほうが持ち分が多いパターンですが、自分がその家の持ち分等を所有していなくとも、子どもをその家で育てるために相手に出ていってもらったという夫婦もいます。
ただ、この場合には強制的に相手を出ていかせることはできません。話し合いで出ていってもらう必要がありますので、ハードルは高めです。
二人ともその家から出ていくパターン
賃貸ですとこのパターンが多いです。まずは自分が出ていって、その後、配偶者も一人で暮らすには広すぎる上に賃料が高いために別の場所を借りるというパターンが多いです。
この場合の気を付ける点は、「自分が家から出ていくパターン」と同様です。
同居を継続するパターン
同居を継続しながら離婚にすすむという夫婦もいらっしゃいます。
実家に帰ることもできず、経済的要因から賃貸マンションないしアパートを借りられないという方がこの方法を選択されることが多いです。
どのパターンでも重要なのが婚姻費用です。
婚姻費用というのは簡単に言うと、夫婦のうち、収入の多いほうが収入の低いほうにお金をあげなければいけないという制度です。
婚姻費用は養育費と違って子どもがいなくてももらえます。
また、養育費よりも高くなっていますので注意が必要です。
婚姻費用の金額についてはパターン分けが必要ですが、以下の裁判所のホームページに算定表がありますのでこちらをご参照ください。
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/