財産分与
財産分与とは
財産分与とは、離婚した夫婦の一方が他方に対して、財産の分与を求めるものです。
そのままですね。
夫婦が生活していく中で、互いに資産(身近なもので言えば預貯金、マイホームを買ったら不動産もこれにあたります)を形成していくことがあるでしょう。
ただ、夫婦の財産のうち、夫にだけ資産を集中させたり、妻にだけ資産を集中させたりすることがあります。
典型的なケースとすると、夫が会社員、妻が専業主婦で、夫の収入の一部のみを生活費として妻に渡し、残りは全て夫が管理するというケースです。
こういった場合、たしかに夫の収入は夫が会社で働いて稼いだものです。
しかしながら、夫は妻の内助の功もあってそれだけの収入を得ているはずです。
妻が家の掃除をしたり、洗濯をしたり、食事を作ったり、育児をすることで夫はそれらの家事から解放されて仕事ができ、収入を得ていたはずです。
夫が稼いだお金だから全て夫のものとはなりません。
離婚時には妻の内助の功も評価した上で、夫の財産を分けることになります。これが財産分与です。
財産分与は2分の1ルール
財産分与は原則として、双方の財産を足して2分の1ずつにわけて計算します。
また借金がある場合に、借金を払ってくれと言うことはさすがに言えませんが、借金も考慮して財産分与を行うことになります。
財産分与の計算例
それでは、財産分与をどう計算するかみてみましょう。
夫:預金が500万円、借金が200万円
妻:預金が100万円
として計算してみましょう。
まずは、双方のプラスの財産を足します。
500万円+100万円=600万円
となります。
次に、ここから夫婦双方の借金を引きます。
600万円-200万円=400万円
つまり、400万円が夫婦の財産総額となります。
これを2で割ります。
400万円÷2=200万円
つまり、夫婦それぞれが200万円ずつ財産をもつような状態にすることになります。
妻は現在預金100万円だけ持っている状態ですので、夫からは財産分与として100万円をもらうことになります。
そうすると、妻は財産分与によって預金が200万円になります。
夫のほうは、預金500万円のうち100万円を妻に渡したので預金は残り400万円です。ただ、借金200万円を背負っているので、プラスの財産とマイナスの財産をあわせると、夫の財産は200万円となります。
財産分与の対象となる財産の種類
財産分与の対象となる財産は、様々なものが考えられますが以下のような財産が代表的です。
これらの財産があるかどうかは必ずチェックしたほうが良いでしょう。
- ・預貯金
- ・不動産
- ・生命保険(解約返戻金があるもの)
- ・退職金
- ・株式
とくに、生命保険と退職金は見逃しがちなので注意してください。
財産分与の基準時
財産分与をする場合には、どの時点での財産を対象にするのか決めなければなりません。
基準時なんて決める意味あるの? いまある財産をわければそれでいいんじゃないの、と思われるかもしれません。
しかしながら、この基準時という概念は非常に重要です。
たとえば、離婚の前にまずは別居を開始したとします。別居時の財産として、夫が1000万円もっていたとします(妻はなにも財産なしと仮定)。
夫が1000万円のうち、どうせ半分は持ってかれるんだからその前に使ってやれと思って、うち500万円を浪費したとします。
その場合に、1000万円を財産分与の対象とするのであれば、妻は500万円もらえるのに対し、浪費後の財産500万円を対象とするのであれば、250万円しかもらえなくなります。
このように、基準時は重要な意味を持っているのです。
実務上は、
離婚成立前に別居をしている場合:別居時を基準時とする
別居をしていない場合:離婚時もしくは離婚調停申立時を基準時とする
傾向にあると考えられます。
退職金の評価
退職金は財産分与の対象となりえますが、それではどのように計算するのでしょうか。
実務上は、仮に基準時に自己都合退職したとしていくらもらえるかということで評価しているケースが多いと思われます。
たとえば、勤務期間が10年、結婚から7年間が経過していたとします。
財産分与の基準時に退職した場合の退職金が500万円だとすると、500万円全額が財産分与の対象になるわけではありません。
財産分与は、あくまでも結婚している間に増加した財産を分けるものです。
500万円という財産は、10年をかけて築いたのに対し、婚姻期間は7年しかありません。500万円全額を財産分与の対象とすると、独身時代に築いてきた財産までわけることになってしまいます。
そのため、婚姻期間と勤務期間とを案分した金額で算出するケースが多いでしょう。
すなわちこの場合、500万円の7/10が財産分与の対象となります。
つまり350万円が分与対象財産です。