親権
親権とは
親権とは、未成年者の子どもを看護教育するためにその父母に認められた権利及び義務のことをいいます。
離婚をする夫婦に子どもがいる場合には、離婚に伴って単独親権となりますのでどちらが親権者になるかを決めなければいけません。
親権の内容
親権の内容として、
- (1)子どもを監護教育する権利義務(民法820条)
- (2)子どもの財産の管理処分権限(民法824条)
の2つに権利義務があります。
(1)子どもを監護教育する権利義務があるので、親権者は自らのもとで子どもを育てていくことになりますし、子どもに教育を受けさせる義務も負います。
親権者決定の基準
離婚をする際に、どちらが親権者になるか話し合いで決まればその通りとなります。
しかしながら、夫婦のうちどちらが親権者となるのか、争いになる事例は少なくありません。
話し合いでまとまらなければ、最終的には裁判所が、どちらが親権者になるべきか判断します。
それでは、裁判所はどのような基準で親権の帰属について判断しているのでしょうか。
まず、一番重要な視点は、「子どもの福祉」にかなうかどうかです。
夫婦のうちどちらが人格的・経済的に優れているのか、ではありません。
次に、子どもの年齢によっては子どもの意思が重要になってきます。
子どもが15歳以上である場合には、裁判所は、審判をする前に子どもの陳述を聴かなければならないとされています(家事審判規則54条)。
なお、実務では、子どもが15歳未満であっても、おおむね10歳前後であれば子どもの意向を確認しています。
子どもの15歳以上の場合には子どももはっきりとした意思を表示できるでしょうから、子どもの意思が非常に重要になると考えられます。
10歳前後から15歳未満までは子どもの意思も重要なのですが、その他の事情(とくにどちらと過ごしているか)が重要になると考えられます。
子どもがおおむね幼児以上10歳未満であれば、子どもの意思は確認されないケースが多いので、このような場合には、その他の事情(とくにどちらと過ごしているか)でどちらが親権者になるか決まってきます。
子どもが乳児であれば、この場合には原則として母親が優先されます。
最後に意思以外の事情としては、どのようなものが重視されるのかみていきましょう。
最も重視されると考えられるのは、実際に子どもを養育しているのはどちらかということです。
裁判所は、子どもの現在の養育環境を強制的に変更することを嫌います。
そのため、既に夫婦が別居しているという場合に、同居していないほうが親権を獲得するのは非常にハードルが高い事だと考えてください。
また、これまでの養育実績も重要です。
たとえば子どもの養育を妻に任せきりにしていた夫が「これからは自分が責任をもって育てます」と言ったところでどの程度の説得力を持つでしょうか。
もちろん、もしかしたら夫のほうが親権者としてふさわしいのかもしれません。しかしながら、それが口だけである可能性は否定できません。
いままで子どもの養育にほとんとタッチしていなかった者が何を言ったところでそれが口だけのものである可能性がある以上、これまでの養育実績にかなうことはないでしょう。
しかしながら、たとえば別居の夫婦のうち、妻がこれまでメインで養育していたものの、妻が子どもを虐待していたとなると話は別です。
虐待をするような親からは子どもを強制的に引き離すのはやむなしと裁判所も考えるでしょう(とくに別居後も虐待している場合)。
なお、経済的事情というのはそれほど重視はされません。たしかに経済事情も考慮要素になるのですが、夫婦のうち一方がお金持ちだから自分が親権者にふさわしいというのなら、あなたが高額な養育費を払えばいいじゃないとなるだけです。
それ以外の事情でもって戦っていく必要があるので注意してください。
子どもが連れ去られた場合
夫婦のうちどちらかが子どもを連れ去った場合には、子どもの監護者の指定及び子どもの引渡しを求める審判の申立てと、同時に、同じ内容の審判前の保全処分の申立てを行うべきです。
この申立てはできるだけ早期に行う必要があります。
後になればなるほど、不利になるのでスピードが命です。
とくに、子どもをこれまで監護していた人は、それまで有利であったとしても、早期に子どもを取り戻さないと一転して不利になる可能性があるので注意してください。