養育費
養育費とは
民法766条1項は、「父母が協議上の離婚をするときは、~~子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」としています。
養育費とは、子の監護に要する費用のことです。
ちなみに、離婚をするまでは婚姻費用として養育費プラスアルファの請求が可能であり、離婚後は、養育費の請求というふうに分けられます。
養育費の金額
養育費の金額については、東京家庭裁判所のホームページに算定表があるのでこちらをご参照ください。
原則として、この算定表どおりとなります。
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/
養育費の修正要素1~住居費~
たとえば、元妻と子どもが賃貸住宅に住んでおり、元夫がその賃料を支払っているとします。
元夫は、養育費+賃料を支払わなければならないのかというと、そうではありません。
なぜなら、元妻は本来自身で支払うべき賃料の支払いを免れているからです。
この場合、まずは算定表にしたがって養育費を算定します。
次に、その養育費の金額から元夫が支払っている賃料を差し引き、残額のみを支払えば良いということになります。
元夫としては、実質的に算定表どおりの養育費を支払えば済むということになります。
なお、個別事情によっては賃料全額を差し引くのではなく一部のみを差し引くというケースもありますので注意が必要です。
これと似たような問題として、元妻と子どもが夫名義の住宅(住宅ローンつき)に住んでいるとします。
この場合、元夫は、住宅ローン+算定表通りの養育費を支払わなければいけないのが原則です。
住宅ローンの支払いは元夫の資産形成に寄与すると考えられるからです。
養育費の修正要素2~教育関係費~
算定表では、子どもは公立中学・公立高校に通うことを前提として算定しています。
私立学校に通う場合や、塾の費用などは考慮されていません。
そのため、私立学校や塾に通っている場合にはその費用分を加算するか否か問題となります。
たとえば婚姻中から塾や私立学校に通っていた場合には、私立学校や塾に通うことを承諾していたといえるでしょうから、養育費の加算が認められやすいといえます。
また、両親の収入・学歴・社会的地位から考えて、子どもが私立学校や塾に通うことが相当と認められる場合にも加算される可能性があります。
養育費の修正要素3~医療費~
医療費は原則として算定表でも考慮されています。
そのため、加算事由として主張できるのは比較的高額な医療費を支出しているような場合です。
たとえば、子どもが歯列矯正をしている場合などが考えられます。
養育費はいつまでもらえるのか
養育費は子どもが何歳までもらえるのでしょうか。
だいたい以下の3つのパターンのいずれかになります。
- 18歳まで
- 20歳まで
- 22歳まで
いずれになるかは、親の収入や学歴等によって変わってきます。
原則は20歳までです。
しかし、親にある程度の収入があって、しかも、親が大卒の場合には22歳まで養育費がもらえる、となるのが一般的でしょう。
これに対して、子どもが大学進学をしないで高卒で働く予定である場合には18歳までとなるでしょう。
ほとんどの裁判所ではこのような運用をされているでしょうが、地方の裁判所では18歳を原則とする、と考えている調停委員もいます。
弁護士の経験談ですが、養育費についてほぼ金額もまとまった後で調停委員が実は養育費の終期を18歳までとする前提で話をすすめていたことが発覚したケースがあります。
調停委員は「ここは田舎だから子どもは高校を卒業したら働きに行くのが当然だ」などと言って強引にまとめようとしてきましたが、原則は20歳までであり、そのような眉唾ものの説得には到底応じられないと強く押し返し、最終的には養育費は20歳まで支払うという内容でまとまりました。
このように、調停委員の言うがままになると、損をするケースも多くあります。そのため、調停段階でも弁護士をつけることが重要です。